NEWS/TOPICS

2018年5月31日
女子アスリートの貧血対策に注目した講習会に約100人が参加

100人の学生の前で講演

100人の学生の前で講演

5月23日(水)、本学D201教室において、中高の女子運動部員を対象に貧血と栄養に関する講習会が開催されました。この講習には、浪商中・高より陸上部、剣道部、水泳部、バスケット部、バレーボール部、柔道部、野球部ほか学外の学生ら約100人が参加し、成長期におけるトレーニングや体重調整によって生じる貧血の問題について学びました。

 

大学院研究科長、教授(体育学部健康・スポーツマネジメント学科)で、大阪体育大学診療所 内科医の前島悦子先生

大学院研究科長、教授(体育学部健康・スポーツマネジメント学科)で、大阪体育大学診療所 内科医の前島悦子先生

 

講師は2名で、まず初めに大学院研究科長、教授(体育学部健康・スポーツマネジメント学科)で、大阪体育大学診療所 内科医の前島悦子先生が登壇。

「アスリートの貧血」と題し、「貧血とは、血中のヘモグロビン数値が少ない状態のこと。このヘモグロビンはヘム鉄とたんぱく質から構成され、各臓器や筋肉に酸素を供給する上で重要な物質である」という概念から解説しました。ちなみに正常値は男性で約14〜18g/dl、女性で約12〜16g/dlです。しかし女性の場合、月経があることからアスリートなら中心値付近の数値は確保したいとも付け加えました。

貧血のサインとしては、「立ちくらみ、めまい、動悸、息切れ、疲れやすい、食欲が無い」という自覚症状があり、他覚症状として「皮膚蒼白、頻脈、眼瞼結膜蒼白、呼吸回数の増加」などの症状が起こると説明しました。

また、貧血と一口にいっても原因は5つほどに分類され、このうちスポーツ選手に多いのは、体重調整による「鉄欠乏性貧血」(主に審美的スポーツ、柔道など)と、足底部を硬い盤面にぶつけることにより毛細血管内の赤血球が壊れることで生じる「溶血性貧血」(主にマラソン、バレーボール、バスケットボールなど)です。種目によって貧血の原因が違うため、「貧血が気になるようであれば早めに受診をするように」と促しました。

最後に、ヘモグロビンの受け皿である赤血球の解説にも触れた上で「一度作られた赤血球は4ヶ月保たれる。万一貧血に値する数値であったとしても、食事により回復することができるため食事の内容が大事」として後半へつなぎました。

 

管理栄養士の井上春奈さん

管理栄養士の井上春奈さん

 

続いての登壇はスポーツ局サポートスタッフで管理栄養士の井上春奈さん。「女性アスリートの食事と貧血」について解説しました。

まず食事の基本に関し「なぜ食べることが大事なのか」「食べることによりどうなるのか」をおさらい。その上で、主に食事により改善される「鉄欠乏性貧血」にならないための食事を紹介しました。その中でも注目すべきは貧血予防に効果的な鉄やたんぱく質、ビタミンB群をバランス良く含んでいる「豚レバー」。しかし、独特の味や風味により苦手な人は無理せず、牛もも肉の赤身やかつお、野菜では小松菜、ほうれん草、えだまめなどでも代用できるとしました。

また、いくら鉄分を多く含んでいる食材だからといって、そればかりを食べてしまうことに対する弊害や、食材により吸収されやすいものとされにくいものがあることも解説した上で、たくさんの種類の栄養素をバランス良く摂取するよう呼びかけました。

昨今、体重調整により炭水化物を極端に減らす風潮がある現代ですが、「たんぱく質+炭水化物の組み合わせにより体たんぱく合成を高める。よって十分な炭水化物の摂取が重要」と話し、ごはんや味噌汁、肉類、野菜類といったバランスのとれた食事が大事であることを強調しました。

貧血対策に限らず「食事が大事」であることは誰しも当然のことと受け止めてはいるものの、このように体系的に学ぶ機会により、改めて自身の体調や食事内容に意識が向くきっかけとなりました。