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2018年3月27日
ウエスタン大学との学術・文化交流事業
「パブリック・ヘルスの拠点づくり~地域に根ざす健康づくりの展開と健康増進に関する研究推進のための地域支援について~」を開催

3月2日(金)、本学中央棟7階にて「パブリック・ヘルスの拠点づくり~地域に根ざす健康づくりの展開と健康増進に関する研究推進のための地域支援について~」と題し、本学が国際交流協定を締結しているカナダ・ウエスタン大学、並びに京都府亀岡市で高齢者への運動介入研究を実践している京都学園大学より講師を招聘しての国際交流シンポジウムを開催。本学関係者の他にも熊取町議会議員や熊取町民の方々など多数参加しました。

梅林教授による開会の挨拶

梅林教授による開会の挨拶

同会は3つのシンポジウムとパネルディスカッションで構成され、最初のシンポジウムⅠではカナダ・ウエスタン大学カナダ高齢者活動センター(Canadian Centre for Activity and Aging)のプログラムディレクターであるクララ・フィッツジェラルド氏が「加齢を支援する場としてのウエスタン大学-高齢者がよりよく年を重ねていくための研究、知識の活用、プログラム-」というテーマで登壇しました。

カナダ・ウエスタン大学カナダ高齢者活動センタープログラムディレクターのクララ・フィッツジェラルド氏

カナダ・ウエスタン大学カナダ高齢者活動センタープログラムディレクターのクララ・フィッツジェラルド氏

カナダも日本と同様、高齢化の進む国の1つです。カナダ高齢者活動センターでは高齢化問題の対応として老化予防プログラムに取り組んでおり、成果をあげています。その理由として、年齢や疾患を基準にするのではなく、運動レベルに応じたクラス分けやプログラムを効果的に実施するためのプログラムリーダーを養成したことを挙げました。

「適切なプログラムを組むことで、住み慣れた町で年をとることができます。研究が適切な介入プログラムとなって高齢者にやりたいと思ってもらうことが重要。研究をするだけでなく、そのプログラムが高齢者にどのような影響を与えるかが大切です」と、クララ氏は研究がいかに実用化されるかということの重要性を強調しました。

 

続いてのシンポジウムⅡでは京都学園大学 吉中康子教授が「高齢者におけるフレイル・サルコペニア・介護予防(その実態と運動を中心にしたプログラムの介入効果)」というテーマで登壇しました。

京都学園大学 吉中康子教授

京都学園大学 吉中康子教授

吉中教授は日本国内で高齢化が急速に進み社会保障費が増え続けている問題について、健康と要介護の中間的過程であるフレイルに該当する人を早期に発見し、効果的な介護予防策を行うことが重要だと訴えました。

フレイルとは体がストレスに弱くなっている状態のことを指し、このフレイルは加齢と共に筋肉量の減るサルコペニアと呼ばれる状態から陥ることが多く、対策として有効なのが運動と栄養です。

吉中教授は、亀岡市との協働研究として進めている「亀岡スタディ」の事例を紹介しました。亀岡スタディでは、高齢者の身体活動量をアップさせるような運動介入が、高齢者の体力を向上させるとともに、閉じこもりやうつの改善、口腔機能の改善をもたらすことを明らかにすることができました。また、運動介入群は対照群に比べ要介護認定率は1/2、介護費受給率は1/3だったと示しました。

吉中教授は「大学と行政が手を携えてこの高齢社会を乗り切るために取り組んでいく必要がある」と力強く締めくくりました。

 

続くシンポジウムⅢでは、本学浜田拓教授が「運動が脳の乳酸代謝を高める効果~脳機能亢進の可能性~」というテーマで登壇しました。これまで運動パフォーマンスに負の効果をもたらすと言われてきた乳酸が、運動能力を高めるエネルギー基質であり、また乳酸が記憶の形成を高める可能性について言及し、運動が高齢者の認知機能の向上に良い影響を及ぼすという知見を述べました。

 

最後のプログラムとなったパネルディスカッションは、「パブリック・ヘルスの拠点づくり~地域に根ざす健康づくりの展開を考える・研究を推進するための地域からの支援について~」と題し、本学下河内洋平教授がファシリテーターを務め、石川節子熊取町健康福祉部  健康・いきいき高齢課課長、クララ氏、本学池島明子准教授の3名がパネリストとして登壇しました。

パネルディスカッション時の様子

パネルディスカッション時の様子

パネルディスカッションでは、これまでのシンポジウムを通じて紹介されたウエスタン大学や京都学園大学の先進的な事例や本学浜田教授の研究に見る健康づくりにおける運動の有効性を基に、本学と熊取町とが協働で目指すパブリック・ヘルスの拠点づくりについて議論を深めました。質疑応答では参加者からも今の熊取町の現状が述べられ、これから熊取町が本学に期待することなど意見や提案もあり、これから本学が目指すパブリック・ヘルスの拠点の実現に期待の膨らむ会となりました。

 

また当日、同会場にて“熊取町×大阪体育大学”DASHプロジェクトに関する協働協定締結式が行われ、藤原敏司熊取町長と本学の岩上安孝学長が握手を交わし、運動・スポーツを通じて、永く楽しく元気に暮らせるまちづくりを協働で推進することを誓い合いました。

◎“熊取町×大阪体育大学”DASHプロジェクトに関する協働協定締結について

大阪体育大学は、大体大ビジョン2024にもとづき、体育学・スポーツ科学・教育学の研究・実践・人材の力を活かし、地域社会の活性化に貢献する拠点づくりに取り組んでおります。

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