2016年8月4日スポーツ現場への還元が使命
研究がアスリートの“宝箱”に


三島 隆章  准教授


三島 隆章  准教授

DASH選抜アスリート・柔道女子78kg超級の山本沙羅選手を、
スポーツ生理学の研究成果をもとにサポートする三島隆章准教授。
研究室で培ったさまざまなデータを、いかにしてアスリート強化に活用するのか。
その一端を語ってもらいました。

肌感覚で感じた研究の重要性

私は「スポーツ生理学」と「発育発達学」という分野を研究しています。スポーツ生理学ではスポーツと筋肉疲労についての研究をしています。発育発達学では、ジュニアスポーツ選手の体力や運動能力が、成長するに従いどのように発達していくか、その過程を探っていく研究です。

そもそも研究者の道に進んだのは、私が実際にスポーツや体育の現場で感じた“肌感覚の疑問”がきっかけ。大学卒業後、トレーニングジムで勤めていたときのことです。ふとお客様から「なぜ筋肉は疲れるのですか?」という質問を受けました。アスリートであれば当たり前の生理現象なのに、その理由を即答できなかった。まさに灯台下暗しです。「なぜか知りたい」、その想いが研究者へと一歩となったのです。

発育発達学を志したのは、大学院を卒業後、短期大学の幼児保育学科に勤務をしていたときのことです。その短大は幼稚園や保育園の先生を育成する学校だったのですが、授業を行う過程で子どもたちの体力、運動能力の発達に興味もったのがはじまりです。スポーツの現場にはさまざまな「何で?」があります。だからこそ研究したものを、今度は現場に落とし込むことが非常に大切なのです。

学生アスリートこそ、研究に興味をもつべき

私が受け持つ発育発達学に対し、興味をもっている学生が多く、大変嬉しく思っています。しかし私は、将来的に学生には講義の枠を超え、最先端で行われている研究を実際に体験してもらいたい。なかでも学生アスリートは、競技力向上のため、常に柔軟な発想をしながらトレーニングを継続する必要があります。そのヒントとなる情報が研究のなかに多く眠っているのです。

今年から本学で取り組み始めたDASHは、研究の成果をスポーツ現場に落とし込む橋渡しのような存在。私はこれまでに研究した成果を、新しいトレーニング方法として学生たちに提案したい。スポーツ科学のエッセンスが入った最新の情報を学生たちに伝えることで、大学が一丸となりスポーツの発展に貢献できると感じています。

すでにDASHの活動として、柔道の山本沙羅選手(女子78kg超級)をサポートしています。山本選手がさらにレベルの高いステージで実力を発揮するには体重アップが必須。78kg超なので、重ければ重いほど相手より有利なフィジカルといえます。しかしただ体重を増やすのではなく、実際の柔道の動作に近いファンクショナルトレーニングを組み合わせることが重要。山本選手がさらに活躍できるように、今後もアカデミックな側面からトレーニングを構築していきたいと思います。

DASHがアカデミックとフィールドの架け橋に

日本スポーツの未来を考えたときに、DASHの取り組みによって私の研究がスポーツ現場で活かされることに期待があります。筋肉疲労の研究は、細かいことが多く、専門的な知識。それを突き詰めることが日本のため、世界のためになるでしょう。

発育発達に関しても同じことがいえます。こちらに関してはちょっとした知識でも、知っていると競技向上に大いに役に立つことが多くあります。例えば「ゴールデンエイジ」という言葉をご存知でしょうか。スポーツ動作を柔軟に体得できる、10歳ぐらいまでの年代をいいます。さらに、ラン、ジャンプ、俊敏性などの能力は5〜7歳が特に発達しやすいことがわかっています。こういった知識をもっている指導者であれば、体系的なスポーツ指導が望めます。

効果的に指導を受けた子どもたちが増えることは、結果として日本のスポーツレベルの底上げに繋がるでしょう。アカデミックな研究をいかに現場に落とし込むか——。人のために研究があるのですから、アカデミックとフィールドの架け橋となるDASHの誕生は、大変、存在意義のあるものだと思っています。

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